ピアニストは蛮族なのか

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中村紘子にいわせると、ピアニストは蛮族であるらしい。
その著書のタイトルの『ピアニストという蛮族がいる』によると、この種族は奇人変人頓珍漢ばかりだそうだ。
といってもこの蛮族はいずれも天才ピアニストばかりで、例えばキャンセル魔のミケランジェリ。
その理由を聞かれると「私は大変高額のギャラをもらっている。
それなのに不十分な演奏をしたら聴衆に申し訳ない」と大真面目であった。

さて当の中村自身が自分をどう思っていたかは定かでないが、この天才少女として世界にデビューした中村も蛮族であったのかもしれない。
彼女はあるときラフマニノフの「ピアノ協奏曲第三番」のオタマジャクシの数を半日かけて数えたという。
その数28,736個だったという。

蛮族だ。

3才でピアノを始めた中村と違って私がピアノを始めたのは10才の頃である。
三女の私に母は。「ピアノを習う」というとすぐにピアノを購入してくれた。
あれから60年以上が経ち、私はまあBの上くらいのピアニストだと思う。
だから野蛮な蛮族とは違い優雅な種族と思うのだが。どうだろうか。
よく言われることだが何事も1日8時間4年頑張ればプロに近づくそうだ。
私は積算すればもうその通過点をはるかに超えているのだけれども。
母が買ってくれた初代のピアノから今は三代目。
猫足が気に入って買った。
イタリアンモードでいまは「ハバネラ」を弾いている。

3年ほど前から私たち夫婦は故郷広島を往復する生活を始めた。
夫が東京の仕事をリタイア。
広島県廿日市のぶち山の中の家で作文生活を始めたからである。
私は夫に付き合って春と秋に年3か月をここで過ごすようになった。
彼は冬場だけ東京に帰京して春が来ると広島に帰郷する。
この3か月の間は近くの市民センターのピアノをお借りして弾くことになる。
浅原市民センターには2台アップライトピアノがあって「ヤマハ」と「カワイ」である。
私はカワイのクラシカルで優しい音色が好きでこちらをお借りしている。

ピアノはなんといっても楽器の王様女王様。
世界中には2,000ものピアノメーカーが存在する。
そのブランドトップ5を紹介すると。
第1位はやはりスタインウェイ。
1台1台を職人が一年かけて作り上げる逸品だ。
2位ボールドウィン。
3位ヤマハ。
大量生産の高音質はさすがメイド・インジャパン。
4位カワイ。
5位チャールズRウォルター。となっている。

ピアノは人間同様に湿度が苦手。
だから日本の高温多湿な気候は彼らにとって良い環境ではない。
欧州のカラリと晴れた気候が彼らには最適だ。
数値で示すと温度20度。湿度50~60パーセントとなる。
私自身、我が家の女王様(我が家ではピアノは当然女性)に不快な思いをさせないように梅雨時から夏には除湿剤を彼女の足元に入れるなどしている。

さて、お世話になっている廿日市のピアノだけど、職員の大下さんに尋ねると1年1度はピアノの調律を依頼しているそうだ。
老婆心ながら「時々、蓋を開けてあげてね」と蛮族のなりそこないは指示をだしてしまう。
「やはり広島市内からピアノ調律士はくるのだろうな」これは頭の中で思っただけ。
実は料金のことも頭をかすめたが、私は蛮族ではないから口にはださなかった。
我が家にも1年1度ピアノ調律士がやってくる。
青葉ピアノからの出向で、彼が契約社員なのかフリーの請負なのか私はしらない。
たいてい昼食後にやってきて調律にかかる。
鍵盤、アクションのフェルト、ピアノ線。フレームの確認などに約1時間半ばかりかかる。
最後にポロポロと音の確認をして、若い彼は微笑む。
それが終わりのサイン。
紅茶にビスケットを出して、最新ニュースを聞き出す。
料金は2万円。いつもぽっきり。
彼が帰ったあとで、私は夫の愛読書『ビル・ゲイツの面接試験』の中にこんな設問があったのを思い出した。
世界中にピアノの調律士は何人いるでしょう。
中村紘子さんのオタマジャクシ数え、よりは頭脳勝負だろう。
今日来た彼は1日に3台から4台のピアノの調律をして1週15から20台。1年50週で1,000台か。
それを世界にあるピアノ台数で割り算する。世界では数が多すぎる。
ので、日本に置き換えてみよ1億2千万人口で世帯数は3で割る。といくら。
ここらで眠くなる。こんな面接試験マジか。私の大事なピアノは1台だけだと。
ピアノの前に座る。

夫、あの男もかなりの変人に間違いない。
栄光と悲惨。波乱万丈の人生。ホロビッツ

表紙・絵 羽田叡世(当時10才)

2019年 平山郁夫コンクール入選作品
「ピアニストにして初代ポーランド首相パデレフスキー」

ピアニストは蛮族なのか” に対して4件のコメントがあります。

  1. 原田 浩 より:

    優しく
    ピアノ愛が感じられます。
    二拠点生活も素敵ですね、憧れてしまいます。

    1. ヤマダヨリコ より:

      コメントありがとうございます。
      10月30日には帰京いたします。
      よろしくお願いいたします。

  2. Koko より:

    リテラシー 何なのか よくわかりません

    頼子さんを包んでいるもの それを言葉に紡いだもの
    それが他者である わたしに きゅんと届いた
    これが 初めての わたしの リテラシー

    叡世さん あなたの絵 も わたしの リテラシー

    1. ヨリコ より:

      コメントありがとうございます。
      10月25日のお別れ会お待ちしております。

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