ブラームスはお好き
ブラームスはお好き
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「ブラームスはお好きですか」といわれると、私は小首を傾げる。
あるスコア販売会社の調べた調査によると、日本人のすきなクラシック作曲家と楽曲は
①ショパン 雨だれ前奏曲
②モーツアルト 交響曲第40番第一楽章
③ベートーヴェン 歓喜の歌。
ブラームス交響曲第3番第三楽章が10位に入っている。
これはサガンの小説の映画化で主題歌になり大ヒットした。
広島市民オーケストラ、秋の定期演奏会のチケットが届いた。
出かけることにした。
一時期この楽団の第二ヴァイオリンの一員として
姪がステージに上がっていた頃からの付き合いで、
もう、かれこれ五年ほど毎回出かけている。
プログラムは、第一部が、ブラームスの「交響曲第二番」だった。
ベートーヴェンの交響曲第六番「田園」にたとえられ、
“ブラームスの田園交響曲”といわれる作品である。
演奏場所は、いつもの広島平和公園内国際会議場フェニックスホールであった。
日本人好みのなんとも哀愁のあるブラームスの作品群。
彼の音楽には短調が多く、そのほの暗さに日本人が共感するのではとの分析がある。
その、ブラームスもまた、日本を愛した作曲家である。
彼は日本の「六段」の音楽を採譜した楽譜集を持っていたという。
彼が、ウイーンにおいて戸田公使夫人の「六段」演奏を聴いたという記録もある。
その模様が「ウイーンに六段の調(ブラームスと戸田伯爵極子夫人)」。
と題された大垣市守屋多々志美術館所蔵の絵画に見ることができる。
時期は、1890年頃の事と思われる。
(※注)この極子夫人は岩倉具視の娘で「鹿鳴館の華」と言われた才媛で山田流箏の名手だった。
さて話は「田園」である。
古典派のベートーヴェンの交響曲第六番へ長調「田園」。
それに対して、このブラームスの交響曲。
豊かな自然を想起させる曲想。
その抒情性は、たしかにロマン派音楽の典型なのだろう。
これは、ベートーヴェン同様に自然を愛したブラームスが
アルプスの山々に囲まれた村、
オーストリア南部ペルチャッハのヴェルタ―湖畔でペンを執った作品。
このペルチャッハの風景を、私は、ある音楽雑誌ブラームス特集号で見ることがあった。
その風景は、私にいつか出かけた、長野県小諸の風景のなだらかな山裾、
そして、家々に似ているように思わせた。
あれは、もう十年以上も前だろうか。
東京新宿から高速バスに乗り小諸駅前に。
駅前の観光案内所を訪ねると、スタンプラリーをやっており、記念品がもらえるという。
今となっては、もう、その歩いたルートは忘れてしまったが、
懐古園から旧北国街道を三、四ケ所ほど巡り
「信州小諸 城下町&文学のめぐり道スタンププレゼント」と記された、
小型の木製記念品をもらった。
それは、いまでも私のデスクの上にある。
その額縁には、田中義則氏の絵と、その中に、
島崎藤村『千曲川のスケッチ』後書の一文が記載されている。
絵には、信州の山々と、小諸の古い白壁の町並みが描かれている。
広島育ちの私は、この信州の旅で浅間山の山裾、その広大な傾斜面の景色に驚いたものだ。
緩い山並みの続く地方に育った者にとって、それは、想像を越えた絶景なのだった。
ベートーヴェンの田園交響曲はその舞台は分かりやすい。
彼が記した、その標題は「シンフォニア・パストラーレ。
あるいは田舎の生活の思い出。絵画的描写というより感情の表出」。
ウイーン近郊の森の散策こそが幸福とスケッチ帳に記した、
ベートーヴェンが愛した田園である。
パストラーレとは、英和辞典によると、たしかに田園(牧歌)曲と訳されている。
MODEを巡る思考は広がっていく。
交響曲第二番ニ長調作品七三は、演奏時間約六十分。
「ドイツ音楽三大B」と称されるブラームスはベートーヴェンの
後継者たるべき作品を生み出さなくならないという重圧がつねにあったという。
第一部が終わりトイレ休憩に。
転倒の常連さん、出入口までのスロープの土壇場が三段の階段になっていた。
シニアには危ない構造だ。転んだ。
私は、第二部の鑑賞を諦めて帰宅した。
その翌日、激痛に襲われた。
背骨の圧迫骨折との診断だった。二週間の入院。
親しい友人からのライン通信によると、
ブラームスは厭世感がひどくて「この楽譜は不吉」。
と書いた手紙を、出版社に送ったことがあるそうだ。
そうだ。SNSの時代である、様々な情報が入ってくる。
私は痛む腰をだましながらショパンを今日も弾いている。

「悲しみよこんにちは」で知られる
フランソワーズ・サガンの小説「ブラームスはお好き」を映画化した
「さよならをもう一度」(1961)はパリを舞台にした男女3人の恋愛物語。
おばさまと青年のロマンス。
世にいうクラシック界の「ドイツ3B」とは、バッハ、ベートヴェン、ブラームス。
当時、彼らの音楽はまさしく時代の先端をいく前衛音楽であった。
バッハのピアノはいまのロックそのもであり、べートーヴェンはピアノの名手で衝撃的。
20世紀のビートルズなみの人気だった。
ブラームスの激しい愛の旋律は映画主題歌にピタリ
Aimez vous Brahms
りてらしくらぶ

